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オランダ・ハーグのハウステンボス宮殿で2026年10月9日、ウィレム・アレキサンダー国王(右)と面会する国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長=ロイター

この社説のポイント

●トランプ米政権がICCの組織本体を制裁対象に。「解体」にも言及し、運営を圧迫
●米ロなど大国の圧力が国際司法の独立を脅かす。重大犯罪の不処罰が広がるおそれ
●制裁には180日間の猶予。日本は米国に撤回を求め、ICCの活動継続を支えるべきだ

 戦争犯罪や人道に対する罪を裁くため、多くの国々が条約に基づいて設立した国際司法機関を、機能不全に追い込もうというのか。

 トランプ米政権が国際刑事裁判所(ICC)本体を制裁対象に指定した。金融取引やITサービスを制限し、捜査や審理を妨げる。ルビオ国務長官はICCを「ならず者」と呼び、改めて「解体」に言及した。これに先立つ8月には、赤根智子所長らへ制裁措置を発表している。

 決定は、ICC元判事ナビ・ピレイ氏へのノーベル平和賞授賞が発表された数時間後だった。国際司法への根深い敵意がうかがえる。

 米国は、非加盟のICCが米軍人らを訴追できることに反発してきた。管轄権に異論があっても、裁判所そのものを壊す理由にはならない。

 トランプ政権はベネズエラに続きイランへの攻撃と、国際法違反が疑われるふるまいを重ねている。大統領や高官の法的責任が問われる可能性を摘みたいのではないか。

 米国は180日の猶予を設けた。米国民を訴追しない保証を求めているとも報じられる。だが一部の国を例外扱いすれば、法の下の平等は揺らぐ。加盟国はこの期間を不当な譲歩ではなく、ICCを守る態勢づくりに使うべきだ。

 ICCへの圧力は米国だけではない。ロシアはプーチン大統領への逮捕状に反発し、赤根智子所長らの身柄引き渡しを各国に要求した。ベネズエラやアフリカの一部の国でも脱退の動きがある。

 大国がICCを力でねじ伏せようとすれば被害者が正義を求める道は狭まる。赤根所長は、裁判所の運命は設立国に委ねられると訴えた。国際社会は金融やITの代替手段を確保し支えねばならない。

 日本の姿勢も問われる。昨年、79カ国・地域が共同で制裁に反対した際、日本は加わらなかった。今回は高市早苗首相が「深く懸念」と表明し、英仏独など8カ国の外相の共同声明で「強く反対」と明言したことは評価する。

 だが、言葉だけでは足りない。ルビオ氏は米同盟国にもICCを抑え込むよう求めている。日本は米国に制裁撤回を求め、最大の分担金拠出国として裁判所の活動を支える具体策を示すべきだ。

 米国による一連の制裁で11月末からのICC締約国会議は開催地をニューヨークからオランダ・ハーグに変更した。日本は各国の結束を促してほしい。米国は最も重要な同盟国だからこそ、国際法に反する行動に率直に異議を唱えられるか。法の支配を掲げる外交の真価が問われる。

  • ICC制裁「猶予180日」 米政権、解体にも言及 日本など8カ国「強く反対」

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